判例

S31.12.06 第一小法廷・判決 昭和30(オ)151 建物収去土地明渡請求(第10巻12号1527頁)

判示事項:

催告後相当期間の経過後にした解除の効力。

要旨:

債務者が履行の催告に応じない場合に、債権者が催告のときから相当期間を経過した後にした解除の意思表示は、催告期間が相当であつたかどうかにかかわりなく、有効である。

主    文

     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         

理    由

 論旨第一点について。
 債務者が遅滞に陥つたときは、債権者が期間を定めず履行を催告した場合であつても、その催告の時から相当の期間を経過してなお債務を履行しないときは契約を解除することができると解すべきことは、当裁判所の判例とするところである(昭和二七年(オ)二四八号、同二九年一二月二一日第三小法廷判決、集八巻一二号二二一三頁)。そして、本件においては、原審は本件債務の履行の催告期限たる昭和二四年一二月三一日と、解除のときたる同二五年一月一〇日との間の日数が、本件契約解除の前提として相当の期間であると判断したが、この判断は当審においても是認することができる。それ故、これを理由として本件解除を有効とした原判決は上記判例と同趣旨に出でたものであつて、所論の違法は認められない。
 同第二点について。
 所論は原審の証拠の採否、事実の認定を非難するものであるが、原審のした証拠の取捨には、所論の違法は認められず、原審のした事実の認定はその挙示の証拠によりこれを是認することができる。それ故、所論は採るを得ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔