判例

S37.03.06 第三小法廷・判決 昭和36(オ)286 所有権移転登記代位請求(第16巻3号436頁)

判示事項:

一 国税徴収法第一七八条と受益者または転得者の善意の挙証責任。

二 いわゆる代物弁済的譲渡担保が詐害行為を構成するとされた事例。

要旨:

一 国税徴収法第一七八条により民法第四二四条を準用する場合において、同条第一項但書にいわゆる受益者または転得者の善意の挙証責任は受益者または転得者に存するものと解すべきである。

二 甲に対して債務二七〇余万円を負担する乙が、少なくともそのうち一二〇万円の未払額あることを知りつつ、唯一の財産である価格二〇〇万円相当の不動産につき、丙に対する元本一三〇万円、利息日歩三銭、期限一年後なる消費貸借債務の担保とするため、所有権を一応丙に譲渡し、弁済期に返済しないときは所有権は完全に丙に帰属することとし、その趣旨で登記も丙名義としておくいわゆる代物弁済的譲渡担保契約をすることは、特段の事情がない限り、甲に対して民法第四二四条の詐害行為を構成する。

主    文

     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         

理    由

 上告代理人相沢岩雄の上告理由第一点について。
 民法四二四条一項但書にいわゆる受益者または転得者の善意の挙証責任は受益者または転得者自身に存するものと解すべきであり、同条を準用する国税徴収法一七八条の解釈としても、この理を異にしない。従つて、原判決は正当であつて、所論はひつきょう独自の見解を主張するものと言うべく、採用に値しない。
 同第二点について。
 原判決の確定した事実関係のもとにおいて、価額計二〇〇万円の本件土地建物を元本一三〇万円の貸金(利息日歩三銭、期限元年後)債権のいわゆる譲渡担保とし、期限に返済しないときはその所有権譲渡を確定的なものとする趣旨の契約をすることが、民法四二四条の取消の対象たる法律行為にあたるとした原審の判断は、正当として肯認できる。所論は採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    石   坂   修   一