判例

S41.05.27 第二小法廷・判決 昭和40(オ)1498 所有権移転登記抹消登記手続請求(第20巻5号1004頁)

判示事項:

抵当不動産の売却と詐害行為の成否。

要旨:

債務者が、被担保債権額以下の実価を有する抵当不動産を相当な価格で売却し、その代金を当該債務の弁済に充てて抵当権の消滅をはかる場合には、右不動産売却行為は、民法第四二四条所定の債権者を害する行為にはあたらない。

主    文

     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         

理    由

 上告代理人山本郁夫の上告理由第一点について。
 原審認定のごとく、債務者が既存の抵当権付債務の弁済をするために、右被担保債権額以下の実価を有する抵当物件たる所有不動産を相当な価格で売却し、その代金を右債務の支払に充てて当該抵当権の消滅をはかる場合にあつては、その結果右債務者の無資力を招いたとしても、右不動産売却行為は、一般債権者の共同担保を減少することにはならないから、民法四二四条所定の詐害行為にあたらないと解するのを相当とする。従つて、これと同じ結論を示した原審の判断は、首肯できる。
 論旨挙示の判例は、本件に適切でなく、本件売却行為にあたつて債務者たる訴外Aに一般債権者を詐害する意思があつたとする所論は、原審認定にそわないことをいうにすぎない。
 従つて、原判決に民法四二四条の解釈の誤りがあるという所論は、すべて採用できない。
 同第二点について。
 論旨は、本件売却行為が債務者と受益者との通謀によることをいうが、右事実関係は原審で主張なく従つて認定判断を経ないことであるから、これを前提とする審理不尽、理由不備の論旨は採用できない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外