TOP > ライブラリー > 判例刑法各論

刑法各論

窃盗罪

最判昭35年4月26日窃盗罪の保護法益
会社更生手続開始決定後に、譲渡担保権者が、未だ債務者の占有する担保目的物を無断で運び去った行為につき、窃盗罪の成立を認めた事例
百選U各論[第2版]24事件、対話P238

最判平元年7月7日自己物の取り戻しと違法阻却
権利行使型の自己の物の取り戻しに関し、『社会通念上借主に受忍を求める限度を超え』ない場合に、違法阻却の余地があることを示した(但し、事案の結論は否定)
前田250[98年版]143事件、対話P241

事後強盗罪

最判昭24年7月9日
事後強盗の既遂・未遂は窃盗行為の既遂・未遂をもって決する
11年口述

通貨偽造罪

最判昭34年6月30日
通貨偽造罪における行使の目的は、自己が行使する場合に限らず他人をして真正の通貨として流通に置かせる目的でもよい

文書偽造罪

最判昭23年4月14日
米軍第一騎兵師団庶務課長ジー・エム・ホワイト(架空人)と記載して、あたかも米軍第一師団の発行したものと思わせるような文書を作成するときは、普通一般の人をして米軍第一騎兵師団発行の真正の文書と誤認せしめる可能性があり、文書の真正に対する公の信頼性を害する危険があるから、私文書偽造罪が成立する
文書偽造の対象となる文書が公文書でない場合には、私文書であり、両者の間に間隙はない

最判昭23年10月26日
架空の者を代表者として、実在する会社名義の契約書及び領収書を作成する行為は、私文書偽造罪を構成する

最決昭45年9月4日
無権限者が、他人を代表もしくは代理すべき資格、または、普通人をして他人を代表もしくは代理するものと誤信させるに足りるような資格を表示して作成した文書の名義人は、代表もしくは代理された本人である
最決平11年12月20日
私文書偽造の本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にあると解されるところ、虚偽の氏名等を記載した履歴書及び雇用契約書等を作成行使した行為は、たとえ自己の顔写真がはり付けられ、あるいは各文書から生ずる責任を免れようとする意思を有していなかったとしても、有印私文書偽造、同行使罪に当たる。


最判昭59年2月17日
原判決が、私文書偽造とは、その作成名義を偽ること、すなわち私文書の名義人でない者が権限がないのに、名義人の氏名を冒用して文書を作成することをいうのであつて、その本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にあるとした点は正当である、と判示した。
甲名義を用いて再入国許可申請書を作成、行使した所為は、被告人において甲という名称を永年自己の氏名として公然使用した結果、それが相当広範囲に被告人を指称するものとして定着していた場合であつても、私文書偽造、同行使罪にあたる。

最決平5年10月5日
被告人と同姓同名の弁護士の名をかたって文書を作成した行為につき、文書の形式・内容から名義人が弁護士Aであって、弁護士資格を有しない被告人とは別人格の者であることが明らかである場合には、本件各文書の名義人と作成者の人格の同一性にそごを生じさせたものというべきであり私文書偽造罪が成立するとした。

最決昭33年9月16日
新聞紙上の広告文(「祝発展、佐賀県労働基準局長野口俊一」なる広告文)が刑法第一五九条第一項にいわゆる「事実証明に関する文書」にあたるとされた事例
社会生活に交渉を有する事項を証明するに足る文書である以上は、権利義務に関する事項に関しないものであつても、刑法一五九条一項にいわゆる事実証明に関する文書に当たる

最決昭31年12月27日
いわゆる無記名定期預金証書を偽造する所為は、私文書偽造の罪にあたる

最決昭56年4月8日
交通事件原票中に、同意を得て犯人以外の名を記入する行為は私文書偽造罪を構成する
前田250[98年版]220事件、11年口述
最決昭56年4月16日
交通切符又は交通反則切符中の供述書を他人の名義で作成した場合は、名義人の事前の承諾があつても、私文書偽造罪が成立する
このような供述書は、その性質上、違反者が他人の名義でこれを作成することは、たとい名義人の承諾があつても、法の許すところではない
最決平6年11月29日
入学選抜試験の答案は、「社会生活に交渉を有する事項」を証明する文書であり、刑法一五九条一項にいう事実証明に関する文書に当たる。


浜松綜合法律事務所