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民法債権判例

債権総論

最判昭46年12月16日 債権者に信義則上、目的物の受領義務が認められた事例。

最判昭30年10月18日 タール事件
制限種類債権の目的物について品質を問題として受領を拒絶すれば「受領遅滞」の責任が生じ得る
「債務者ガ物ノ給付ヲ為スニ必要ナル行為を完了シタルトキ」の意義
内田P18,P22

債権者代位権

最判昭40年10月12日 金銭債権を有する者は、債務者の資力が当該債権を弁済するについて十分でない場合にかぎり、債権者代位権を行使できる

最判昭44年6月24日 債権者による債務者の債権の代位行使は、自己の債権額の範囲においてのみなし得る

最判昭28年12月24日 債務者が自ら権利を行使している場合には、債権者代位権を行使することはできない

最判昭39年4月17日 債権者は、債務者に代位してその債務者に属する代位権を行使することができる

債権者代位権の転用が認められる事例

最判昭43年9月26日 債権者は、自己の債権を保全するに必要な限度で、債務者に代位して、他の債権者に対する債務の消滅時効を援用することができる

最判昭50年3月6日 土地の売主の共同相続人は、その相続した土地の売却代金債権を保全するため、買主に代位して他の共同相続人に対し所有権移転登記手続を請求することができる

債権者代位権の転用が認められない事例

最判昭38年4月23日 建物賃貸人は、その賃借権を保全するために、建物賃貸人に代位して建物買取請求権を行使することはできない

最判昭40年5月4日 土地賃借人が借地上の建物に設定した抵当権の効力は当該土地の賃借権に及ぶが、賃借人は、賃貸人において右賃借権の移転を承諾しないときであつても、競落人に対し、土地所有者たる賃貸人に代位して右土地の明渡を請求することはできない

詐害行為取消権


最判昭33年2月21日 債務者の行為を詐害行為として民法第四二四条を適用するには、その行為が取消権を行使する債務者の債権発生後になされたことが必要である

最判昭50年7月17日 債務者による詐害行為当時債権者であつた者は、その後その債権を目的とする準消費貸借契約を締結した場合においても、右詐害行為を取り消すことができる

最判昭38年10月10日 売買一方の予約に基づいて売買本契約が成立した場合は、売買予約締結当時を基準として詐害行為の要件の具備の有無を判断すべきである
最判昭55年1月24日 不動産物権の譲渡行為が債権者の債権成立前にされた場合には、その登記が右債権成立後に経由されたときであつても、詐害行為取消権は成立しない


最判昭35年4月26日 詐害行為の成立には、債務者がその債権者を害することを知つて法律行為をしたことを要するが、必ずしも害することを意図し、もしくは欲してこれをしたことを要しない

最判昭37年10月9日 詐害行為取消の判決に基づき取消債権者が受益者より自己に価格賠償金の引渡を受けた場合、取消債権者は、右価格賠償金を他の債権者に分配する義務を負うものではない

最判昭46年11月19日 金銭の支払を求める詐害行為取消訴訟手続において被告は自己の債権額に対応する按分額の支払を拒めない

最判昭50年12月1日 不動産の譲渡が詐害行為になる場合において現物返還に代わる価格賠償をすべきときの価格は、特別の事情がないかぎり、当該詐害行為取消訴訟の事実審口頭弁論終結時を基準として算定すべきである

最判昭39年6月12日 詐害行為取消権の行使は、訴の方法によるべきであつて、抗弁の方法によることは許されない

対象(否定)

最判平10年6月12日 債権譲渡の通知
※ 最判昭55年1月24日参照

最判昭33年9月26日 債務者に対する債務の弁済は、原則として詐害行為とならず、唯、債務者が一債権者と通謀し、他の債権者を害する意思をもつて弁済したような場合にのみ詐害行為となる


最判昭41年5月27日 債務者が、被担保債権額以下の実価を有する抵当不動産を相当な価格で売却し、その代金を当該債務の弁済に充てて抵当権の消滅をはかる場合の右不動産売却行為

最判昭42年11月9日 債務者が生計費および子女の教育費を借用するため貸主に対し唯一の動産を譲渡担保に供する行為

最判昭44年12月19日 営業を継続して更正の道を見出すためにやむなくした仕入先に対する担保提供行為

最判昭39年1月23日商法第一四一条の適用または準用ある会社についての詐害設立取消

最判昭39年7月10日 詐害行為として不動産売却行為を取り消し所有権取得登記の抹消を受益者に請求する訴は、受益者が当該不動産上に第三者のために右不動産の価格を上廻る被担保債権額について抵当権を設定している場合には、特段の事情のないかぎり、許されない

詐害行為後に目的不動産に抵当権が設定された場合、詐害行為が取り消され所有権移転登記が抹消されても、当該抵当権は当然には消滅しない

最判昭49年9月20日 相続の放棄

最判昭54年4月6日 約束手形の振出人甲が原告となりその受取人乙から裏書を受けた丙を被告として提起した右裏書についての詐害行為取消の訴において、甲の請求が認容された場合には、甲は、丙から隠れた取立委任裏書を受けていた丁に対し、丁の善意・悪意を問わず、乙丙間の裏書が詐害行為として取り消された事実を援用して、丁の手形金請求を拒むことができる

対象(肯定)

最判昭39年11月17日 債務者の重要な財産を債権者に売却して、売買代金債権と債権者の有する債権とを相殺する旨の約定をした場合には、たとえ適正価格による売買であっても詐害行為となり得る

最判昭48年11月30日 特定の債権者に対する債務の弁済に代えて第三者に対する自己の債権を譲渡する行為は、債権額の範囲内であっても詐害行為となり得る

最(大)判昭36年7月19日 特定物引渡請求権を有する者も、その目的物を債務者が処分することにより無資力となつた場合には、右処分行為を詐害行為として取り消すことができる

最判昭53年10月5日 不動産の引渡請求権者は、目的不動産についてされた債務者の処分行為を詐害行為として取り消す場合に、直接自己に対する所有権移転登記手続を請求することはできない

最判昭58年12月19日 離婚に伴う財産分与は、民法七六八条三項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為とはならない

最判平12年3月9日 @ 離婚に伴う慰謝料として配偶者の一方が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額を支払う旨の合意は右損害賠償債務の額を超えた部分についてその限度で詐害行為として取り消し得る
A離婚に伴う財産分与が民法七六八条三項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情があるときには不相当に過大な部分についてその限度で取り消し得る

最判昭32年11月1日 特定の債務者のために根抵当権を設定する行為


最判平11年6月11日 共同相続人の間で成立した遺産分割協議


最判昭37年3月6日 代物弁済契約

範囲

最判昭30年10月11日 詐害行為となる債務者の行為の目的物が、不可分な一棟の建物であるときは、たとえその価額が債権者を超える場合でも、債権者は、右行為の全部を取り消すことができる

最判昭54年1月25日 抵当権の付着する土地についてされた譲渡担保契約が詐害行為に該当する場合において、譲渡担保権者が当該抵当権者以外の債権者であり、右土地の価額から右抵当権の被担保債権の額を控除した額が詐害行為取消権の基礎となつている債権の額を下回つているときは、譲渡担保契約の全部を取り消して土地自体の原状回復をすることを認めるべきである

最判昭35年4月26日 @抵当権の設定が詐害行為として取り消される場合において、抵当権の目的たる不動産がすでに競売されたときは、受益者である抵当権者は、優先弁済金を債務者に返還すべきである Aこの場合、利得が残存しない場合も返還義務を免れない 

最判平4年2月27日 共同抵当の目的とされた不動産の売買契約が詐害行為に該当する場合に抵当権が消滅したときの価格賠償の額の算定にあたっては、目的不動産の価額から控除すべき抵当権の被担保債権額は民法392条の趣旨に従った割付額とすべきである

最判昭29年4月2日 債権譲渡が詐害行為として取り消された場合、受益者が、その債権を行使して得た弁済金はすべて返還することを要し、そのうちから取立費用を差引くことは許されない


債権の準占有者への弁済

最判昭37年8月21日 債権の準占有者への弁済(478条)
債権者の代理人と称して債権を行使する者についても民法478条が適用される。
債権の準占有者に対する弁済が有効とされるためには、弁済者が善意かつ無過失であることを要する。

契約

最判昭47年9月7日
契約が取り消されたときの不当利得返還債務相互は同時履行関係に立つ。
内田UP50

最判昭41年3月22日
相手方が債務を履行しない意思が明確であるときには、口頭の提供なくとも相手方は履行遅滞責任を免れない。
内田UP55

最判昭43年12月5日
第三者のためにする契約を含むかどうかの判断
内田UP81

最判昭45年8月20日
受領遅滞と解除


最判昭31年12月6日
541条の相当の期間を定めた催告


最判昭36年6月22日
履行の提供と催告は、両者が同時であってもよいし、催告で定めた日に履行の提供を行なうことでもよい。
内田UP89

最判昭39年2月25日
共有者から解除する場合の解除権の行使は「共有物」の管理に関する事項」(252条)にあたり、共有持分の価格の過半数で行使できるので、全員がそろう必要はなく、544条1項の適用はない。


最判昭51年2月13日
目的物滅失・毀損の場合の原状回復
内田UP98

最判昭43年2月23日
付随義務の不履行と解除
内田UP105

手付

最判昭24年10月4日
解約手付の認定
内田UP114

最判平6年3月22日
手付の倍額を提供して売主側から解除する場合には、買主に現実の提供をすることを要する。

最判昭40年11月24日
557条の履行の着手の判断
内田UP118

瑕疵担保責任

最判昭36年12月15日塩釜の声新聞社事件
瑕疵担保責任の理解

最判昭41年4月14日
目的物に対する法律上の制限は物の瑕疵に含まれる。内田UP133


最判平3年4月2日
借地上の建物の売買において、売買の対象は借地権であり、敷地そのものではないから、敷地の欠陥は売買の目的物の瑕疵にあたらないとした。内田UP134


最判平4年10月20日
566条3項の1年の期間制限は除斥期間であるが、その期間内に裁判上の権利行使をするまでの必要はないとした。また、損害賠償請求権を保存するためには、少なくとも売主に対して瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の算定根拠を示すなどして、売主の担保責任を問う意思を明確に告げる必要がある、と判示した。内田UP137


賃貸借・用益物権

最判昭30年12月26日
地役権は「継続かつ表現のものに限り」時効取得できる(283条)が、ここでいう「継続」が認められるためには、承役地上に通路が要役地所有者によって開設されることを要する。内田UP168


最判昭49年9月2日
敷金の返還と家屋の明渡は同時履行の関係に立たない。内田UP180


最判昭48年2月2日
賃貸借契約が終了したのちに家屋が譲渡された場合には、敷金は新所有者には当然には承継されない。内田UP181


最判昭43年11月21日
貸主の修繕義務の不履行により不便が生じている場合に、使用収益が妨げられた割合に応じて借主は賃料の一部の支払を拒み得る。内田UP196

最判昭36年12月21日
賃借人の債務不履行により賃貸借契約が解除された場合は、転借人は賃貸人に対し目的物を占有する権限を失う。内田UP213

最判昭37年3月29日
賃料延滞による賃貸借の解除に際しては転借人に対する催告は不要である。内田UP213

最(大)判昭40年3月17日
借地借家法10条1項(旧建物保護法1条1項)の建物の登記の表示が誤っていた場合でも借地権の対抗力は認められる。内田UP218

最判平8年10月14日
賃借人である小規模で閉鎖的な有限会社において、持分の譲渡及び役員の交代により実質的な経営者が交代しても、そのことは、民法六一二条にいう賃借権の譲渡に当たらない。
民弁講義検討指示判例

請負


最判平5年10月19日
下請負人は、注文者との関係では、元請負人のいわば履行補助者的立場に立つものにすぎず、注文者のためにする建物建築工事に関して、元請負人と異なる権利関係を主張し得る立場にはない。内田U P262

不法行為法


最判平10年6月12日
民法724条後段は除斥期間を定めたものであるとしつつ、「158条の法意に照らし」停止が認められた事例。

最判昭33年8月5日
近親者の慰謝料請求について生命侵害に至らない場合であっても,被害者が死亡した場合に比肩しうべき精神上の苦痛を受けた場合には、自己の権利として慰謝料を請求し得る。

浜松綜合法律事務所